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【映画】新章開幕「ジェイソン・ボーン」感想

マット・デイモン主演、大人気スパイ映画の新章が遂に幕を開けた。平日のレイトショーにも関わらず其れなりに客が入っていたので、これは幸先の良いスタートと言えるのではないだろうか。私も早速109シネマズIMAXシアターにて鑑賞して来たので感想をここに記したい。歴代スパイ映画にはミッション・インポッシブルや007(ダブル・オー・セブン) など名だたる名作が揃っているが、果たしてこのボーンシリーズもそれらレジェンドに肩を並べる作品となるのか。 

 

あらすじ

ひっそりと暮らしていたジェイソン・ボーン(マット・デイモン)の前に、CIAの同僚だったニッキー(ジュリア・スタイルズ)が姿を現す。彼女はCIAが世界中を監視・操作するための極秘プログラムを立ち上げたことと、ボーンの過去にまつわるある真実を告げる。これをきっかけに、再び動き始めたボーンの追跡を任されたCIAエージェントのリー(アリシア・ヴィキャンデル)は、彼を組織に取り込もうとするが……。(「シネマトゥデイ」より)

 

冒頭から観客を一気に映画の世界に引き込む力は流石ボーンシリーズの正統なる後継作だ。前作(ボーン・レガシー)があまりにアレな出来栄えだったので余計にそう感じてしまったのだが、本来このシリーズは観ているものを掴んで離さない面白さがある。

ボーンシリーズはマット・デイモンの出世作であると同時に彼の役者としての成長を投影した作品でもある。IMAXシアターのスクリーンに映し出されたジェイソン・ボーンの顔には深いシワがはっきりと刻み込まれており、それは「記憶を失ったスパイ」として生きてきた彼の苦難の人生を物語っていた。やはりキャラクタが役者と同じように年を取っていく事はとても自然だし何より映画そのものに深みが出る。そういった意味ではとても自然に役作りが出来ているのではないかと思った。

本シリーズは「ジェイソン・ボーンの過去を明らかにする」というサスペンス要素の上に成り立っている映画なのだが、実のところ今作においてはそれがオマケのように感じてしまった。それは、この映画があまりにアクションに比重を置き過ぎているからであろう。アクションに力を入れている事は分かるのだが他のスパイ映画とは違い緊張感が希薄で、シリアスな部分とアクションの部分にメリハリが感じられなかった事が残念だ。アクション映画としてはよく出来ているのだが、あくまで「スパイ映画」としての観点から観てみると少し疑問が残ってしまう結果であった。

今回、ヴァンサン・カッセルがボーンに恨みを持つCIAの作戦員(なぜか翻訳は工作員ではなく作戦員となっていた)として登場するのだが不気味な雰囲気と荒んだ目が特に良かった。しかし、これは序盤までだ。中盤、終盤にかけては個人的な恨みを晴らすために街中でドンパチする残念な役に変貌する。本来、CIAの作戦員は表舞台に立つような職業ではない。だからこそ、ラストのカーチェイスは「俺サイコー、ヒャッハー!」な感じがして悔しいところだ。さらに、そんな彼を「強い敵」に見せるためか、彼以外のCIA作戦員がしょぼい。いや、しょぼすぎる。その他のかませ犬感は半端ないものであった。 

また、CIAがボーンに軽々と逃げられてしまうシーンが酷い。2度ばかり「絶対、逃がすなよ!」と指示を受けた5分後には「逃げられました」と報告するシーンがある。この陳腐なやり取りは兎に角残念で、ダチョウ倶楽部のかの有名なお家芸を思い出してしまった程だ。「押すなよ、押すなよ、絶対押すなよ!」、「どぼーん」みたいな。

デューイCIA長官のトミー・リー・ジョーンズが登場すると缶コーヒーBOSSのCMを思い出すのは私だけではないはずだ。まさか、ここまでBOSSに脳を洗脳させるとは思いもよらなかった。これは少々マイナスに働いてしまった。

そして、ラストのカーチェイスは全盛期のマイケル・ベイを彷彿とさせるド迫力。これはスパイ映画ではない、と思ったのは内緒だ。

細かい点はかなり気になるもののラストシーンはとてもクール。次作へ繋がる伏線すら感じさせるボーンらしさに思わずニヤリとしてしまうだろう。

 

兎に角この映画を観ていると別のいろんな事を思い出すのだ。BOSS、ダチョウ倶楽部、マイケル・ベイ…えぇ、どれも印象が強すぎた。ボーンらしさが足りないのではなく、寧ろその他の要素が強すぎる作品だった。じゃ。

 

byアホウドリ