今や漫画は日本の文化だ。映画「バクマン。」はそんな漫画に青春のすべてを賭けた高校生たちのドラマである。キャストを一見すると佐藤健や神木隆之介などの今をときめく若手俳優を起用しており、汗と涙が飛び散る爽やかな学園ドラマを彷彿とさせる。しかし、違った。この映画で繰り広げられるのは爽やかな学園ドラマからはほど遠い、漫画家として生きる道を選んだ高校生たちの戦う姿だった。「努力・友情・勝利」をモットーに高校最後の大勝負が始まる。
これは漫画家へ贈る最大限のオマージュだ。日本人のみならず海外の人にもオススメしたい作品である。
あらすじ
優れた画力を持ちながら将来の展望もなく毎日を過ごしていた高校生の真城最高(佐藤健)は、漫画原作家を志す高木秋人(神木隆之介)から一緒に漫画家になろうと誘われる。当初は拒否していたものの声優志望のクラスメート亜豆美保への恋心をきっかけに、最高はプロの漫画家になることを決意。コンビを組んだ最高と秋人は週刊少年ジャンプ連載を目標に日々奮闘するが……。
漫画家のリアルな生活を描く一方、CGやスタイリッシュな音楽を使った表現が我々を不思議な世界に誘う。例えば、ライバルとの駆け引きを擬似的なアクションとして挿入する事で、観ている人の視覚(目)を通して(彼らが)競り合っている印象を植え付けるのだ。そうする事でよりダイレクトに思考や感情が伝わってきた。漫画の映画化は当たり外れが大きいが映画「バクマン。」は大当たりだ。
そして、もうひとつ魅力的なものがある。それはサカナクションが担当する音楽である。私自身がサカナクシャンの大ファンである事を差し引いたとしてもとても良く出来ており、シーンにあった効果的な演出がなされている。例えば、漫画を描く事を題材にした映画らしくペンを走らせる音が徐々に音楽になっていく、こういった遊び心のある表現が映画をより一層盛り上げているのだ。ボーカルの山口一郎氏は楽曲提供するにあたりかなり苦労したらしいが、その甲斐あって正に映画と音楽が一つになっていた。この辺りを意識して観てみると更に映画が楽しくなるかもしれない。漫画を描くというアナログな行為すらポップな雰囲気に表現する事でひと味もふた味も違う完成となっていた。是非、音楽を気にして欲しい。
映画としての見せ方が巧く時間を忘れさせてくれる。特に原作(漫画)と映像、そして音楽の異常なまでのシンクロが新しい日本映画の可能性を感じさせてくれる作品であった。日本の漫画の素晴らしさだけでなく、日本の映画の素晴らしさが伝わる作品なので是非観て頂きたい。じゃ。
PS.少年ジャンプを読んでいた人はより身近に感じるだろう。ジャンプは偉大なり。
byアホウドリ