或る阿呆鳥に呟く。

~ジュニアテニス、映画、雑記、何でもありの備忘録〜

【ジュニアテニス】サーブの再現性

サーブは唯一自分から開始できる攻撃。

 

と、声を大にして言えるのは、ある程度のキャリアがあってのことで、多くのジュニア選手にとってサーブは攻撃にもなるし、その逆にもなり得るショットだと思う。

 

特に小学校低学年(1、2年生)の場合、ダブルフォルトが多く、まずは「サーブを入れてゲームを開始する」ところから始まる。これがとても難しい。身長の低いジュニア選手にとってネットは壁のようなもの。当然、高い位置から落とすスピンサーブなど打てるはずもなく、回転が少なく勢いのないサーブで試合が開始される。

 

そして、小学校中学年(3、4年)になると、少しずつ勢いのあるサーブが打てる選手が出てくる。特にフィジカルに恵まれた選手はスピードが速くて、回転量の多いサーブが打てるようになる。

スライスやスピンなど、多種多様なサーブが打てる選手も出てきて、サーブからの試合展開のバリエーションが一気に増える。

 

さらに、小学校高学年(5、6年生)にもなると、サーブ自体を武器とする選手が登場する。全国レベルの選手にもなると、サーブのスピードや回転量、コントロールも大人顔負けとなる。自身のサーブで試合を組み立てることのできる選手が増えてくる。

 

しかし、強い選手は極端にスピードや回転量に特化したサーブを打つというより、すべてが高いレベルで安定したサーブを打つ選手が多い。もちろん、サーブのスピードや回転量も他の選手より多いのだろうが、それ以上に安定感がある。

何より、サーブを打った後の試合展開が上手い選手が多い。

 

サーブに限った話ではないが、試合では同じようにボールを打てる「再現性の高い」選手が上位に残る。

 

例えば時速180キロのサーブをサービスボックスの四隅に何度も打てる選手、これは驚異的だろう。

それが褒められるようなフォームではなくても、質の高いボールが安定して打てれば良いと思う。

しかし、実際のところ質の高いボールを打ち続けるためには同じフォーム(感覚)で打つ必要があり、正しい指導と反復練習のバランスが重要となる。

 

スクールガチャで練習の時間や質は左右されることもあると思うが、本人やサポートする親の努力も必要だ。本当にテニスは難しい。

【ジュニアテニス】左利き vs 左利き

ラケット競技は左利きが有利(通説)。

 

左利きの選手のボールは回転が逆になるうえ、絶対数の関係上、対戦機会が少ないため打ちずらいと言われる。

テニスでも左利き特有の右利き選手のバックハンド側に切れるワイドサーブや右利き選手のバックハンド側に大きく跳ねるスピンボール(エッグボール)はまさに左利きの利点を活かした戦い方だと思う。

 

先日、息子は公式戦で左利きの子と対戦した。その子は我が県でも上位ランキングの選手。お互い左利き。

 

試合はというと、序盤こそお互い左利きということもあり、腹の探り合いのような展開で思い切りの良いプレーができず、イージーミスを連発。息子もやりにくそう。結局、お互いのプレースタイルが噛み合うことはなく、試合中盤までこう着状態が続いたが、最終的には自力で勝る相手の子の勝利。

 

この試合の敗因は息子が得意とするバックハンドスライスがまともに返らなかったことだ思う。明らかに相手選手(左利き)のボールを打ちにくそうにしており、サイドアウトが多かった。

シングルバックハンドの選手(特にジュニア)はバックハンドスライスが生命線ともいえる。それが、まったく決まらなければ勝つことは難しい。それが顕著に出てしまった試合のように感じた。

 

左利きの選手が希少だったのは過去の話。最近の試合を見ていても左利きの選手で溢れている。気のせいかもしれないが…

【ジュニアテニス】ロジャー・フェデラー引退

2022年9月12日深夜、衝撃的なニュースが舞い込んできた。

 

ロジャー・フェデラー引退。

 

息子がテニスを習い始めた頃(5年前)、「シングルバックハンドといえばフェデラー」のような世界共通認識があったように思う。

 

実際のところ、5年前と言えば既にフェデラーの全盛期ではない。しかし、全盛期を過ぎても尚、多くの人が同じように考えるのは彼の素晴らしいキャリアが物語っている。

 

近年はスピンボールをベースに戦う選手が多くなったことで、シングルバックハンドの選手は力強く高く弾むボールに苦戦を強いられる場面が多くなった。現在のテニス界は両手バックハンドが主流となっているが、それでも尚、一定数シングルバックハンドの使い手が存在するのはフェデラーの功績かもしれない。

 

息子にフェデラーが引退したことを伝えると、「もうフェデラーとナダルの対決は観れないんかー」と残念がっていた。きっと世界中の人も同じ気持ちだと思う。

 

ありがとう、芝の王者ロジャー・フェデラー。

【ジュニアテニス】〇〇ゾーンの使い手現る。

U12のとある公式戦。今回は息子ではなく、同じスクールに通うA君から聞いた話。テニスというスポーツの奥深さを感じたエピソードなので紹介したい。

 

まずは、登場人物から。

A君(小5)

A君は強烈なフォアハンドと細かく丁寧なフットワークを武器に戦うストローカー。

サーブは多少ムラがあり、ボレーやドロップショットなどのテクニックはこれからかもしれないが、ガッツあるプレーで見ているものを楽しませてくれるスケールの大きい選手。

 

Y君(小4)

今大会でA君と対戦した県トップクラスの実力者。Y君はすべてのショットの精度がとても高いオールラウンダー。

左利きから繰り出されるフォアハンドは前後左右に打ち分けられるコントロールと強烈なスピンを持ち合わせている。そして、リターン有利と言われるジュニアテニスにおいてもサーブで点数を量産できる攻撃的なスタイルで、小さい頃から県トップを走っている選手。

 

打倒Y君の作戦

試合前日、A君はコーチと打倒Y君の作戦を練っていた。まず、何より厄介なのは左利きから放たれる強烈なフォアハンド。これを封じなければ勝機はない。

コーチとの話し合いの結果、フットワークで翻弄し、Y君のバックハンド(高め)を狙うというシンプルながら王道の作戦に落ち着いた。

私も、この作戦は大賛成だった。A君のフォアハンドも県で指折りだから、A君のフォアハンドとY君のバックハンドの対決になるときっと良い試合になると思ったからだ。

 

試合

作戦は的中した。4ゲーム目まで素晴らしい試合運びでA君はY君に対して互角以上の戦いを見せた。作戦どおりA君はY君のバックハンド(高め)にボールを集めており、流石のY君も攻めに転じられない。そして、少しでもY君が甘いボールを返すと、すかさずA君は強烈なフォアハンドでポイントを重ねていく。誰もが「勝てる」と思うような試合運びだった。

 

しかし、5ゲーム目、突如Y君のフォアハンドが決まり始めた。依然、A君はしっかりとY君のバックハンド側を狙っている。確かに、Y君は多少ポジションを変えたのかもしれないが、徐々にY君がフォアハンドで返す確率が増え、A君は防戦一方の展開になっていく。

 

Y君のオープンコート(隙)が無い訳ではない。しかし、A君のボールは何故だかY君にフォアハンドで取られてしまう。

まともなストローク戦では勝機を見出せないと感じたA君はボレーやドロップショットなどで試合の流れを変えようと試みるがY君の勢いは止められず、A君が強引に打ったショットはネットを超えない。終盤はA君のミスが増えてしまい、そのままゲームセット。

 

試合後

A君に話を聞いたところ、「最初から最後まで相手のバックハンド(高め)にボールを集中させようとした。でも、どう打ってもフォアハンドで取られてしまう」と言っていた。

 

また、「フォアハンド側に打たされる」とも言っていた。

 

これって、テニスの王子様の手塚ゾーンでは…

 

手塚ゾーン

打球の回転を自在に操ることで、相手の打球を自分の立っている場所へ戻ってくるようにする技のことです。(「テニスの王子様の学園」より)

 

アニメの中の大技なので現実ではこんなことありえないのかもしれない。でも、少なからずA君からするとそれに近い感覚だったらしい。

 

Y君が手塚ゾーンの使い手かどうかは定かではないが、少なくとも自分のフォアハンド側に打たせる技術、そしてボールの軌道を早めに予測してベストなポジションで力強く打ち返す技術を持っていることは事実。

 

これが「強い選手」なんだろうね…

【ジュニアテニス】サーブと勝率。

公式戦の翌日、息子(8歳11ヶ月)と地元の公園でサーブの練習をした。

 

公式戦の記事はこちらから。

www.sakonet.jp

 

公式戦ではシード選手相手にすべてのショットが通じず、あえなく 1回戦敗退となった。特に息子は、自分のサーブがまったく入らず、試合にならなかったことを悔いていた。

 

ジュニアテニスはリターン有利と言われる。背の低いジュニアがコートに突き刺さるような強烈なサーブを打つことは至難の業。しかしながら、サーブはテニスで必須のショット。どんなに弱くてもサーブが入らなければ試合が始まらない。

 

スクールの練習メニュには大抵サーブ練習が含まれている。しかし、日常生活では使わない動きのサーブは15分程度の練習では上達しない。しっかりと時間を取って練習することが大切だと思う。理想は毎日30分ぐらいサーブを練習する時間があれば嬉しい。

 

すくすくのっぽくんなどの試合に出始めて感じたことだが、10歳以下のジュニアのほとんどはサーブが安定していない。(上位ランカーは除く)ストロークは上手なのに自身のサーブでゲームを落とすことが多い。きっと、みんなサーブには苦労しているんだろうな、と思う。

 

サーブ練習開始!

さて、まずはじっくりと息子のサーブを見てみた。私が見たところ、全体的にフラフラしており、毎回ラケットの違う所で打っているように思えた。しかし、私自身がテニス素人なので、的確なアドバイスを与えれるわけではない。こうなると、アレに頼るしかない。

 

そう、YouTube。便利な時代。

 

iPhoneで息子のサーブ(フォーム)を撮影し、一緒にプロのサーブと見比べてみる。

 

「これ、オレ?」

 

自分の中では綺麗なフォームで打てていると勘違いしていたらしく、ショックを受けていた。まずは、現実を知ることが大切。

 

ブツブツ言いながらも、一緒に見比べていくと、いろんな点に気が付く。例えば、足の位置。息子はボールを打つ瞬間、両足の位置がサービスラインと並行に近く、体が正面を向いてしまっている。さらに、ラケットの握りや軌道、トスや打ったときの肘の位置、トロフィーポーズ、なども大きく違う。

 

当然、プロとジュニアでは体格や筋力に大きな差があり、フォームだけ真似してもねって思われる方もいるだろうが、正しいフォームは安定性につながると思う。

 

私はヘンテコなフォームであっても自身が思い描くスピードとコントロールが両立できているのであれば問題ないと思う。

でも、ヘンテコなフォームの場合、何度も同じように打つことが難しい。だから、正しいフォームで打てるようにする。

 

ここから1年間ぐらい土日の朝練はサーブを中心に行った。子どもの吸収力はすごいもので、半年後には、それなりのフォームでそれなりのサーブが打てるようになった。(決して、サーブが人より上手くなった訳ではありません)

 

これを境にすくすくのっぽくんの成績が大きく向上した。(公式戦は入るサーブで勝てるほど甘くはなかったが‥)

 

ジュニアテニスではサーブを入れることが大切。試合を制するサーブまでいかなくても、試合を始めるサーブはジュニアから学ぶといいと思う。その為にはしっか「とサーブの練習時間を確保する。これが難しいのだが…

【ジュニアテニス】小3息子、公式戦に挑む。

グリーンボールの強烈な洗礼を受けた3ヶ月後、息子は初めて公式戦に出場した。(8歳11ヶ月)

 

前回のグリーンボール大会(すくすくのっぽくん)の記事はこちら。

www.sakonet.jp

 

この大会のことは今でも良く覚えている。初めての公式戦、初めてのハードコート、初めてのシード選手との対戦、兎に角、何もできなかった。

 

今思えば、息子のテニス人生に大きな影響を与えた試合の1つだったように思う。

 

当時は嫌な記憶として刻まれたが、それから1年後の今となってはジュニアテニスの厳しさを私と息子に教えてくれた試合だったと感じる。

 

この大会は、私の地域では最も大きく、多くのジュニアが参加する大会だ。とても大きい大会なので予選と本選は数日間に分けて行われる。

予選ブロックにもシード選手がいるので、ノーシードの選手はほぼ必ずシード選手を倒さなければ予選を勝ち抜くことはできない。

 

息子の相手選手も予選ブロックのシード選手だった。

 

前の試合が終わり、息子と相手選手がコートに入ろうとしている姿を見ると…

 

デケェ!(心の声)

 

相手選手は息子より20センチ、いや30センチぐらいは大きく見えた。シードの風格。

 

目を丸くしている私をよそ目に、サーブ練習が始まった。相手選手は明らかに試合慣れしている所作。嫌な予感がした。

 

試合

相手選手のスピンサーブ、これが兎に角厄介だった。ジュニアの選手で(本当の)スピンサーブが打てる子は多くない。ハードコートと相まって、ボールの跳ね方が尋常ではない。離れた場所から観戦していた我々でさえ、サーブがすごいことは分かった。高い打点から放たれる強烈なスピンサーブが容赦なくコートに突き刺さる。

当時、シングルバックハンドに転向後、1年弱ということもあり、バックハンドもまったく安定しておらず、高いボールが取れない。(この点に関しては未だに安定とは程遠いが…)

 

果たして何球返球できたろうか。

 

しっかりと回転のかかったボールはそっとやちょっとではまともに返らない。

 

そして、息子のサーブもまったく入らない。

 

会場の雰囲気に飲まれ、焦りで何もできなかった。

 

結果は0-6。まともな試合にならなかった。

 

帰り道

ぼーっと、車の窓から流れる景色を眺めている息子を見ると、かける言葉も出なかった。悔しさすら生まれない実力の差を見せつけられて、憔悴しきっているように見えた。

 

しかし、どうやら私は大きな勘違いをしていたようだ。

 

息子の闘志は燃え尽きていなかったのだ。

 

それはまた別の記事で。

 

by アホウドリ

【ジュニアテニス】グリーンボール大会、不安と孤独。

先日のオレンジボール大会から数週間後、息子はグリーンボール大会のコートに立っていた。(8歳9ヶ月)

 

前回のオレンジボール大会の記事はこちら。

www.sakonet.jp

 

蝉すら熱中症になりそうな暑い日、息子は初めてグリーンボール大会に出場した。

これまで出場していたレッドボール大会やオレンジボール大会では使用するコートの大きさが制限されていたが、グリーンボール大会からはコート全面を使用して試合を行うこととなる。

 

テニスコートは不安と孤独を感じさせるには十分な大きさだということを思い知らされた。

試合前

大会運営から軽く試合進行の説明があった後、アップらしいアップをする間もなく、すぐに息子の名前が呼ばれた。

 

「〇〇選手、△番コートで試合をして下さい」

 

息子は私の方を向き、緊張と不安を合わせたようなぎこちない笑顔で一言。

 

「じゃあ、行ってくるわ。」(ニカッ!)

 

息子は小さな背中に大きなラケットバックを背負い、ゆっくりとコートに足を踏み入れた。そして、自分のベンチにラケットバックを丁寧に置き、ラケットと水筒を取り出した。相手選手と一連の形式的な挨拶を行い、いよいよ息子の戦いが始まった。

 

試合(サーブ練習)

フィッチの結果、相手選手(2歳年上)からサーブ練習が始まった。

 

バシッ!! ドンッ!! バーン!!

 

オレンジボールまでの大会ではありえないようなスピードと威力のサーブだった。(後で分かったことだが、相手の子は他県ではかなりランキングが高い選手だった)

息子はボールにラケットを当てるだけで精いっぱい。相手のボールを1球も返せないまま、息子のサーブ練習が回ってきた。

 

パッシュ。 

 

無駄に回転のかかったボールはネットを超えない。

 

初めてのグリーンボール大会ということで極度の緊張をしており、サーブが1球も入らなかった。

 

不安を抱えたまま試合が始まった。

 

試合

試合が始まってからも防戦一方だった。

 

相手の速くて重いサーブが返せないだけではなく、自分のサーブもまったく入らない。すぐに息子は追い詰められた。

 

そして、あっという間に試合終了。

 

1試合目を終え、コートから出てきた息子の目には「悔しさ」が滲み出ていた。

 

きっと、不甲斐ない自分のプレーに対しての感情だったのだと思う。

 

そして息子は次の試合も負けた。

 

グリーンボールの圧倒的なスピードと威力、そして自身のサーブの不調が敗因だったことは、誰の目にも明らかだった。シングルバックハンドなんで…なんて言い訳はできない内容だ。

 

これで下位トーナメント進出が確定した。

 

その後、下位トーナメントでは何とか1勝したものの、次の試合ですぐに負けてしまい、この日の試合はすべて終了となった。

 

不安と孤独

テニスの試合は基本的にコーチングが認められない。特にシングルスの場合は、コートに足を踏み入れた瞬間から試合終了まで、1人で戦うこととなる。これは他のスポーツでは類をみない性質のように感じる。

ジュニアの場合(特に低年齢)、悔しくて泣いてしまうこともあれば、不安と孤独で泣いてしまうこともある。子どもからするとテニスコートはとてつもなく広く感じるからかもしれない。

 

トーナメントでは、試合が進むにつれ、負けた選手は帰っていくので必然的に観客は減っていく。優勝しても表彰式は選手と親、そして関係者のみ。こんな殺風景な光景はざらだ。今日の対戦相手は孤独な戦いを共に乗り越えた戦友になるのかもしれない。

 

やっぱり、ジュニアテニスは残酷だ。

 

by アホウドリ