騒がしい教室の中、教師・森口(松たか子)は静かに語り始める。当時4歳だった娘の死は事故ではなく、このクラスの生徒によって殺されたと。徐々に明らかになる事件の真相、犯人は誰か、なぜ殺したのか、そして森口は犯人にある復讐をしたことを告白する。
所感
初めて「告白」を観たとき、因果応報という言葉が頭の中に浮かんだ。自分のした悪行がブーメランのように戻って来て、首を切り落とされる。それも、ゆっくりと苦しむように錆びた刃でズブズブと肉と骨を断ち切られるのである。その耐え難い苦痛は犯人が森口の娘を殺したのと同じ所業。
殺意は殺意しか生まない、こんな使い古された言葉が斬新に感じられるのは、この映画の見せ方にあるだろう。色々なものがズレている。いや、意図的にズラされている。親と子、教師と生徒、愛情と欲望、何から何まで歪んでいる。この歪みがモンスターペアレンツ、いじめ、殺意などに変貌する。そんな歪みをAKBの楽曲にのせて表現するのだ。クレイジーな作品だ。
人間社会の闇は深い、その闇を作り上げているのは学校という閉鎖的な組織なのかもしれない。それは、ほぼランダムに集められた子供たちが共同生活を強いられる環境という特殊性に起因する。逃げたくても逃げられない閉鎖された空間。
結局、歪みに耐え切れず、他人を歪ますことで自分を正当化しようとする。正当化された歪みはあたかも正しい行いであるかのように振る舞い他人を傷付ける。学校にはこういった負の無限ループが存在する。
そんな学校組織の闇をエンターテイメントとしたのが「告白」。新感覚。そう、ヤクをキメたときのような中毒的な面白さを孕んだ作品だ。勿論、ヤクをキメたというのは比喩である。
日本アカデミー賞4冠受賞。同年には妻夫木聡・深津絵里が出演した「悪人」が5冠、その他「十三人の刺客」が4冠を受賞していたが、個人的には告白がもう少し受賞しても良かったように思う。過激すぎる内容が裏目に出たようだ。