まずはあらすじからどうぞ。小学生の頃、村崎十三(小栗旬)は同級生の赤井トール(新井浩文)から受けたイジメが原因で、自分の中に13号(中村獅童)という凶悪な人格を形成してしまいます。
10年後、成長した十三は赤井に復讐をするべく同じアパートの13号室に引っ越してきますが、すでに赤井は家庭を持ち、幸せな生活をしていました。
その頃、十三は自分の中に存在する13号の暴走を止められなくなっており、13号は赤井に「最も残酷な復讐」を果たそうとするのですが…。
映画を観た感想
あらすじを読むと「復讐劇」を思い浮かべる人が多いと思いますが、実際は少し違います。
この作品は復讐劇を中心に据えながらも、最後には荒れた心に爽やかな風を吹かす見事な終焉を迎えるのです。
そこには誰しもが自分の心の奥底には13号(凶悪な人格)を抱えており、決して十三が特別ではないと言う切ないメッセージを感じました。
また、平川地一丁目が歌うエンディングソング「はがれた夜」も映画の雰囲気とよく合っており切ない余韻を残します。
ラストシーンについては、ネタバレになりますので詳しくは書けませんが、作中の過激なバイオレンスシーンがあるからこそ、このラストシーンが活きてくるのです。
「復讐心」と「爽やかな風」を感じる少し変わったサイコホラー映画でした。とても面白かったです。
キャスティング
まずは凶悪な13号を演じた中村獅童の演技が素晴らしかった。暴力性を全面に出したキャラクタは下手なホラー映画のキャラクタなんかより不気味でした。中村獅童は、こういった分かりやすい演技をするのが巧いですね。
また、十三を演じた小栗旬は、この時期が一番俳優として魅力的でした。日常(本当の自分)と非日常(13号)の間で揺れ動く心情をよく表現していました。
そして、忘れてはいけないのがいじめっ子役である新井浩文です。この人、素でしょ。あまりにも適役で笑えました。これ程、ベタな不良を演じきれる俳優はそれほどいません。貴重な俳優だと思います。
演出(バイオレンス)
残虐なシーンの一部が「アニメーション」で表現されています。そのアニメーションのイラストは結構可愛いのですが、これが子供のような「無垢な狂気」を感じさせる演出となっています。
もう既に映画のバイオレンス表現は出尽くした感がありますが、この映画ではそういったありふれた描写とは違った見せ方をしているのです。これは必見ですよ。
まとめ
以前「日本映画は死んだのか」という記事を書いたことがありましたが、 この「隣人13号」のような新しいサイコホラー映画が製作できるのでしたら未来は明るいと思います。
でも、現実はそう簡単なものではなく、この作品を超える作品は多く作られていません。
過去の記事はこちらから。
少々過激な描写が先行して敬遠されがちな作品だと思いますが、先入観を除いて観て頂ければと思います。じゃあ。