名作と呼ばれる絵本には時代を超えて愛し続けられる理由がある。私の家では35年も前に母親が読んでくれた絵本を今は妻が息子に読み聞かせている。どんな時代だろうと子供にとって親と絵本を楽しむ時間は格別なのだろう。
そういった往年の名作絵本が存在する一方、的確に時代を反映した絵本もある。今回ご紹介する絵本「ママのスマホになりたい」だ。
ここ数年、ニュースなどで取り上げられる「スマホ依存症」はもはや当人だけの問題ではない。この病気の最大の被害者はスマホ依存症の親を持つ子供たちだと思う。
子供は自分のする事や自分が作った作品を親に見てもらいたい。これは自分の存在を親に認知してもらう事で、自分の価値観や存在意義を見出しているのだろう。
しかし、肝心の親が子供の顔も見ずスマホばかりを眺めていたらどうだろうか。きっと哀しいだろう。
この絵本はそんな子供の気持ちをユーモアを交えて表現しているのだ。
主人公の「かんたろう」がママのスマホや自分の弟に嫉妬をして少し悪ぶる姿が可笑しくもどこか切ない。
作中、幼稚園の先生に「将来何になりたいか」を聞かれたとき、皆が消防士、お嫁さん、うんこおっぱい、とそれぞれなりたいものを答えて行くのだが、かんたろうは「ママのスマホになりたい」と答える。これを聞いた友達は「そんなの、なれる訳ねーじゃんか」と一蹴するのだが、ママの興味を引きたいからママがいつも見ているスマホになりたいと言うのだ。
ママがスマホばっかりみてるから、ぼくはスマホになりたい。ママがテレビばっかりみるなら、ぼくは、テレビになりたい。ママがあかちゃんしかみないならぼくは、あかちゃんになりたい。でもね、ホントのこというと…(「ママのスマホになりたい」より)
引用の最後の「…」の部分にかんたろうの本当の気持ちが表現されており、私は不覚にも泣いてしまった。ここは是非絵本を読んで欲しい。
スマホは便利だ。しかし、便利と引き換えに何か大切なものや大切な時間を失っていないだろうか。
この絵本はスマホ世代の親へ当てたメッセージなのかもしれない。今一度、スマホ、子供、そして自分の関係性を考え直して欲しい。そして、スマホを見ているときに子供の顔を見てほしい。きっと子供は親の顔を見ているから。
ちなみに絵本なので必要以上に重くなるような事はない。うちの息子は「うんこおっぱい」のシーンで毎回大笑いしている。気になる方は是非。
PS.ちなみに私は図書館で借りた。新しい絵本なのに置いていてくれた図書館って素晴らしい。
byアホウドリ