或る阿呆鳥に呟く。

~ジュニアテニス、映画、雑記、何でもありの備忘録〜

【映画】人ではなく恐竜が主人公の異色作品「アーロと少年」感想

これまでに製作されたピクサー映画の中においては「いぶし銀」的な作品であった。

物語は「隕石が地球にぶつかっていなかったら」という「たられば話」なので、最低限隕石の衝突と恐竜が絶滅してしまった因果関係を知っておく事が映画を楽しむ条件となる。その為、小さい子供と観る場合はこれらを簡単に教えておいてあげるとすんなりと映画に入れるだろう。寧ろ、それを知らなければ作品が意図する事の半分ほどしか伝わらない様に感じた。

本作は言葉の話せる恐竜と言葉の話せない人間の友情を大自然に投影した壮大な作品だ。

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【映画】人の理性が正しい方向に働くとは限らない「ミスト」感想

霧の先には何があるのだろう。人は見えないものに対して異常なほど恐怖を抱く。霧に隠れているのは凶悪な物体ではなく、もしかしたら凶悪な心なのかもしれない。

人の心は弱い。キャパシティを超える恐怖を感じた時、人としての理性は吹き飛んでしまう。

そして、人は見えない心の拠り所に助けを求めるのだ。

映画「ミスト」は見えない恐怖に直面したとき、どの様に人の心が変わり行くのかを巧く表現した良作であった。

  

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あらすじ

ガラス窓を破るほどの嵐の翌日、スーパーへ買い出しに出掛けたデヴィッド(トーマス・ジェーン)。軍人やパトカーが慌ただしく街を往来し、あっという間に店の外は濃い霧に覆われた。設備点検のために外に出た店員のジム(ウィリアム・サドラー)が不気味な物体に襲われると、店内の人々は次第に理性を失いはじめ……。(「シネマトゥデイ」より)

 

所感

この映画は「残酷」である。ハッピーエンドでなければ嫌な方は回れ右をして頂きたい。(ブラウザの場合は「戻る」ボタンをクリックだ)それでは感想に移る。

 

人間が理性を失い本性をさらけ出す事がすべて悪い、という訳ではない。この手のミステリィ映画にありがちなのは理性を失った人間は先走り死んでしまう展開だ。

しかし、現実はそうではない。理性を失って我武者羅な行動をしても救われる時はあるのではないか。

 

「皆、冷静になるのだ!」

 

映画の中でデキるリーダーはいつもそう呼び掛けて皆を正しい方向へ導こうとする。しかし、現実はどうだろうか。リーダーの正しい行い(行動)が最善の方向へ導いていくとは限らないのではないか。

そう、我々が生きている現実社会は実に残酷なのだ。この映画は現実社会の残酷さをマジマジとを見せつけてくる。

そして最後は「やってらんねー」な終焉を迎える。

 

脚本

とても優れている。しかし、世間の評価としては賛否が分かれているようだ。やはり、予想通りのラストではなかった辺りに批判が集中したものと思われる。

でも、個人的にはとても巧いと思う。つい、ニヤリとしてしまった。

この映画は人生の不条理さを描いているのだ。そんな作品にハッピーエンドを期待してはいけない。寧ろ「やってらんねー」を期待するべきだ。

 

まとめ

とても「サディスティック」な作品だと思う。

現実社会で長く生きていると個人の力・考えではどうにでもならない理不尽な壁にぶち当たる。この映画は、まさにそんな作品だ。

ヒーローが勝ち、ハッピーエンドを迎えるような映画ではない事だけお伝えしよう。さぁ、残酷な世界へレッツ・ゴー。じゃ。 

 

byアホウドリ 

【映画】生きる事は奇跡の連発である「オデッセイ」感想

科学を武器に乗り越える、これは主人公マーク・ワトニーが火星で発言した言葉である。

遠く離れた火星は我々人類にとって未知の領域だ。そこで突然の嵐によって1人火星に取り残されてしまったワトニー。嵐に吹き飛ばされ、怪我をし、仲間との通信手段はなく、食料も限られている。そんな苦境に陥っても生きることを諦めなかった彼と彼の仲間たちの姿が「1人の命の大切さ」を改めて教えてくれた。そう、生きる事は奇跡の連発なのだ、と。

 

あらすじ

火星での有人探査中に嵐に巻き込まれた宇宙飛行士のマーク・ワトニー(マット・デイモン)。乗組員はワトニーが死亡したと思い、火星を去るが、彼は生きていた。空気も水も通信手段もなく、わずかな食料しかない危機的状況で、ワトニーは生き延びようとする。一方、NASAは世界中から科学者を結集し救出を企て、仲間たちもまた大胆な救出ミッションを敢行しようとしていた。(「シネマトゥデイ」より) 

 

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所感

映画を観ていて思い出した事がある。無人島でのサバイバル生活を描いた映画「キャスト・アウェイ」(主演:トム・ハンクス)だ。こちらは飛行機事故により1人無人島に漂流した男の姿を描いたものである。

無人島には無害・有害、多種多様な生物が生息している。それらの存在は漂流者にとって「生物がいる安心」であると同時に「襲われる恐怖」でもある。キャスト・アウェイは生物に対する恐怖を巧く表現した作品であった。

 

これに対して「オデッセイ」の舞台は、地球ではなく火星である。そこは無人島以上に未知の領域で水も食物もない。同時に決定的な脅威となる生物もいないのだ。火星には生物がいない怖さがある。究極の孤独を巧く演出していた。

そして、この映画の優れているところは、決して不安を煽るだけのホラー映画に成り下がっていないところだ。寧ろ、火星に1人でいる事を謳歌するかのようなシーンすら有るのだ。ワトニーは苦境をポジティブに捉え「僕は火星に作物を耕した。これで火星は僕の植民地って訳さ」と言った感じのジョークを飛ばしてくるのだ。アメリカ人のポジティブな民族性を感じさせる場面である。

 

映画中は専門用語のオンパレードでよく分からないシーンもあったのだが、決して中だるみをする事はなかった。やはり主演マット・デイモンの演技が素晴らしいのだ。彼の変貌ぶりを見るだけでも、如何にこの映画に賭けていたかが窺い知れた。

彼の他に安心して「他者との共演が極端に少ないサバイバル映画」を任すことのできる俳優は少ないだろう。

 

ジャガイモ

簡単に言うと食料が尽きるのが先か、救援が来るのが先かの映画である。何も無いところから何かを生み出すことはできない、しかし何かがあれば必要なものを生み出すことができる。科学(人知)の力を感じさせる作品だった。

それを表しているのが映画のキーワードであるジャガイモだ。詳しくは述べないが科学の力とジャガイモがあれば火星でも生き延べる事ができるらしい。恐れ入った。いや、本当に。

 

まとめ

上映時間が2時間24分と長いがご心配なく。初めから最後まで一気に駆け抜けるので途中で飽きることは無い。

そして、この映画の終焉は貴方が想像している通りである。最後にだけ重点を置いた作品ではなく、それに至るまでに幾つものサプライズが用意されているのだ。

この映画は新社会人や社会人2、3年目の方に観て頂きたい。きっと自分のやりたい事と生きている事の喜びを感じ前向きになれるだろう。

 

じゃ。

 

byアホウドリ

【映画】死刑囚による最期の復讐劇「凶悪」感想

この映画からは「凶悪な心は誰にでも宿る」、私はそのようなメッセージを感じた。タイトルが指し示している凶悪は、犯罪そのものではなく、それに至る心の狂気の事のようだ。

事の発端は1人の残忍な犯罪者による犯行だ。しかし、彼の凶悪な心は周りの人間にも徐々に伝播(でんぱ)していく。1人、また1人と。その様子が余りにもリアルに描かれており、人間の心の奥底に潜む狂気を見せつけられた。

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【映画】覚悟を決めてから観るべき作品「冷たい熱帯魚」感想

これは人間の身勝手で凶暴で哀しい性(サガ)を投影した作品だ。実際にあった「愛犬家殺人事件」をモチーフにしているものの、エンターテイメント要素を過分に加えて脚色しているため別物と言っても過言ではない。

しかしながら、同じ手口で殺人や死体処理が行われたらしく正直気分が悪くなってしまった。殺人鬼・村田が死体処理中に口にする「ボディを透明にする」と言う表現は実際の事件でも使われていたらしい。

こうしてみると実際の殺人や死体処理なんてものは我々一般人からするとリアリティに欠ける話なのかもしれない。いや、本来はそうあるべきだろう。

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【映画】もはやターミネーターではない「ターミネーター:新起動ジェニシス」感想

ダダンダンダダン。人気シリーズ5作目。とはいえ、3と4については無かったものとして描かれているため、時系列は「1→2→5」となり実質3作目と言えるのかもしれない。

私は4も面白かったのでシリーズとして認めて欲しい気持ちも有るが、こればかりは1ファンの意見ではどうにもならない。残念無念である。

今回はターミネーターファンとして感想を書いており、少々厳しい言葉が含まれているので悪しからず。

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【映画】素晴らしき駄作「大日本人」(監督:松本人志)感想

最近、お笑い芸人が映画を製作するケースは珍しくなくなった。ビートたけし(北野武)や品川庄司、劇団ひとりが有名なところである。天は二物を与えず、という諺があるが、彼らを見る限りそういう訳ではなさそうだ。チクショー、才能が羨ましい。

ダウンタウンの松本人志(まっちゃん)は名実ともに日本を代表する芸人だ。つい先日、映画監督・松本人志が製作した「大日本人」を観た。これは国内外問わず多くの「酷評」を受けた作品である。

 

確かにあまりにも駄作だった。

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