霧の先には何があるのだろう。人は見えないものに対して異常なほど恐怖を抱く。霧に隠れているのは凶悪な物体ではなく、もしかしたら凶悪な心なのかもしれない。
人の心は弱い。キャパシティを超える恐怖を感じた時、人としての理性は吹き飛んでしまう。
そして、人は見えない心の拠り所に助けを求めるのだ。
映画「ミスト」は見えない恐怖に直面したとき、どの様に人の心が変わり行くのかを巧く表現した良作であった。
あらすじ
ガラス窓を破るほどの嵐の翌日、スーパーへ買い出しに出掛けたデヴィッド(トーマス・ジェーン)。軍人やパトカーが慌ただしく街を往来し、あっという間に店の外は濃い霧に覆われた。設備点検のために外に出た店員のジム(ウィリアム・サドラー)が不気味な物体に襲われると、店内の人々は次第に理性を失いはじめ……。(「シネマトゥデイ」より)
所感
この映画は「残酷」である。ハッピーエンドでなければ嫌な方は回れ右をして頂きたい。(ブラウザの場合は「戻る」ボタンをクリックだ)それでは感想に移る。
人間が理性を失い本性をさらけ出す事がすべて悪い、という訳ではない。この手のミステリィ映画にありがちなのは理性を失った人間は先走り死んでしまう展開だ。
しかし、現実はそうではない。理性を失って我武者羅な行動をしても救われる時はあるのではないか。
「皆、冷静になるのだ!」
映画の中でデキるリーダーはいつもそう呼び掛けて皆を正しい方向へ導こうとする。しかし、現実はどうだろうか。リーダーの正しい行い(行動)が最善の方向へ導いていくとは限らないのではないか。
そう、我々が生きている現実社会は実に残酷なのだ。この映画は現実社会の残酷さをマジマジとを見せつけてくる。
そして最後は「やってらんねー」な終焉を迎える。
脚本
とても優れている。しかし、世間の評価としては賛否が分かれているようだ。やはり、予想通りのラストではなかった辺りに批判が集中したものと思われる。
でも、個人的にはとても巧いと思う。つい、ニヤリとしてしまった。
この映画は人生の不条理さを描いているのだ。そんな作品にハッピーエンドを期待してはいけない。寧ろ「やってらんねー」を期待するべきだ。
まとめ
とても「サディスティック」な作品だと思う。
現実社会で長く生きていると個人の力・考えではどうにでもならない理不尽な壁にぶち当たる。この映画は、まさにそんな作品だ。
ヒーローが勝ち、ハッピーエンドを迎えるような映画ではない事だけお伝えしよう。さぁ、残酷な世界へレッツ・ゴー。じゃ。
byアホウドリ